卒業研究で求められることは、「みずから課題を発見し、それを解決する」ことです。 ところが、多くの学生が最初につまづくのが、その最初のテーマ決めです。 こんなことをやりたい、というのはあるのに、テーマがなかなか決まらない。 そんなことがよくあります。
指導教員としてよく感じるのが、「それはテーマじゃなくてトピックだ」という違和感です。 たとえば「ホッキョクグマと気候変動」はトピックであって、テーマではありません。 「気候変動はホッキョクグマの繁殖行動にどのような影響を与えているか」のように、答えを求める問いの形になってはじめてテーマになります。
でも、「よい問いとは何か」「どうやって設定すればいいのか」を説明するのは、意外と難しいものです。
そのヒントを丁寧に教えてくれるのが、『リサーチのはじめかた——「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法』です。 この本が提案するのは「自分中心研究」という考え方。 まず自分にとって切実な問いを出発点にしつつ、同時にその問いを重要だと感じる人が一定数いるような問いを選ぶ、というアプローチです。
本書は人文社会科学系の研究を念頭に置いていますが、動物学や生態学などの理系分野にも、研究の入口としては最良の本だと思います。 理系の卒論では「実験/観察する」ことが目的化しがちで、「何のための研究か」という問いが軽視されることがあります。 しかしそれでは、研究職以外に進む多くの学生にとって、卒論が本当の意味で身になりません。 そういう「とりあえず研究」は、自己研鑽としてはむしろタイパが悪いとさえ言えます。
「問い」を立てる力は、卒論を超えて社会に出てからも役立つスキルです。 テーマ設定に悩んでいる4年生は、まずはこれを読んでください。 1~3年生の人にとっても、研究するとはどういうことか、ひいては、学ぶとはどういうことか、を考えるきっかけになるはずです。
- 書誌情報
- リサーチのはじめかた—「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法. トーマス・S・マラニー, クリストファー・レア. 筑摩書房. 2023年. ISBN:9784480837257. 2,000円 (税抜) (Amazonでみる)