生態学 (2) 生態学における「環境」とは?

[以下は授業のエッセンスを再構成したもので、授業内容とはかならずしも一致しません。]

生態学とは、生物と環境の相互作用 (かかわりあい) を探求する学問分野です。 キーワードは「生物」「環境」「相互作用 (かかわりあい)」ですね。 それぞれの意味する内容をちょっと考えてみましょう。 まずは「環境」です。

「環境」は英語で environment ですが、この英単語のもともとの意味は「周囲をとりまくもの」です。 つまり、何かの周囲をとりまいている事物が「環境」です。 そのとりまかれている何かのことを「主体」といいます。

生態学における「環境」といえば、気候や土壌、植生などを思いうかべることが多いです。 しかし、そうした事物それ自体が環境なのではなく、事物がとりまいている主体があってはじめて環境になるのです。 言い換えると、環境とは「主体との関係で捉えられた事物」といえます。

生態学の文脈では、当然、その主体は生物です。 主体である、という意味をこめて、「生物学的主体」と呼ぶことにしましょう。 主体、などというと、ついつい個体を想起してしまいますが、生態学が主体としてあつかうのは個体だけではありません。 同種個体のあつまりである「群れ」や「個体群」、あるいはある地域に生息する複数の生物種のまとまり「生物群集」なども生物学的主体になります。

ところで、同じ ところ にいる複数の個体や複数の種は、同じ 環境 に暮らしていると言えるでしょうか? そうではありません。 とりまいている事物が同じであったとしても、それらの事物のもつ「意味」は個体や種によって、つまり主体によって異なります。 たとえば道に犬のウンチが落ちていたら、ヒトであるわたしたちはそれを汚いと思って避けて通りますが、ハエにとっては魅力的な食物です。 おなじ「犬のウンチ」がある主体 (ヒト) にとっては「汚物」であり、別の主体 (ハエ) にとっては「食物」となる。 このように考えると、環境は主体によってさまざまであることがわかると思います。 何がどのような意味をもつかはその生物の生き方、つまり、その生物が周囲の事物とどのようにかかわりあうか (相互作用するか) によって異なります。

初回で述べた「生態学とは生物と環境との相互作用を探求する学問分野である」という命題 (文) は、「生態学とは生物の生き方を周囲の事物との相互作用として理解しようとする学問分野である」と言いかえることができます。 これで、「生物」「環境」「相互作用」の意味がつながりました。

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